AlphonseのCINEMA BOX

鬼滅の刃 兄妹の絆

2020/10/19(月)追加

作品情報

制作年:2019
制作国:日本
監督:外崎春雄
主演:竈門炭治郎、禰豆子
助演:冨岡義勇、鱗滝左近次、鬼舞辻無惨
ジャンル:アニメ

少年は刃を握る、妹を救うため―

コメント

Alphonse 2020/10/19(月)

テレビ放映にて鑑賞。

鬼に家族を殺された竈門炭治郎(かまどたんじろう)は、妹の禰豆子(ねずこ)を助けるため、
鬼殺隊の剣士となり鬼退治をするのであった。
というお話。

最初に断っておきますが、漫画は読んでいません。
そのため最新ではどのような展開になっているか知りません。
漫画のテレビアニメ化の総集編ですが、
劇場公開作品ということで取り上げました。

本作は炭治郎が鬼に家族を殺され、鬼殺隊の剣士となるまで。

さて、内容に触れていこう。

仕事で夜遅くなってしなった主人公炭治郎。
家に戻るのが翌日になってしまったため、その夜に鬼に家族を殺されてしまう。
幸いにも妹の禰豆子だけは息がある。なんとか医者に見せようとする炭治郎。
しかし、妹は鬼になってしまっていた。

鬼殺隊の剣士冨岡義勇に見つかり殺されかかる妹。
命乞いをして剣士の手から妹を救おうとするも剣士に一喝されてしまう。

なんとか機転を利かしてピンチを乗り越えた炭治郎。
剣士はその炭治郎の機転に将来性を感じ、鱗滝左近次を紹介する。

鱗滝師匠の元で修行の日々を送る炭治郎。
修行が終了し、鬼殺隊の剣士の最終試験にも合格した炭治郎は、
鬼退治を始めるのであった。

概ね本作のあらすじはこんな所だろう。

では感想に移るとしよう。
テレビシリーズの頃から本作は面白かった。
ただ、こんな大人気作品になるとは思ってもみなかったけれど。

最初に興味をもったのは剣士に炭治郎が一喝されるシーン。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな」

の名言だ。

それはまるで、中島みゆきの「宙船」の歌詞のようでもある。

最初炭治郎は命乞いをする。
謝れば何でも許される昨今の世の中を象徴している。
物語は大正時代の話だが、主人公のメンタルは現代人のそれと同じ。

大河ドラマで戦国期に現代人がタイムスリップした。
と批判されることがあるが、歴史物語のお約束。方程式がわかっていない。
過去の時代に物語の舞台を移すのは現代で描ききれない不都合な場面を描くために他ならない。
本作の残酷描写をそのまま現代でやっては犯罪者である。
そもそも刀を持ち歩くだけで銃刀法違反である。

そのため「北斗の拳」では時代を未来にしてあるし、
「風の谷のナウシカ」や「AKIRA」も同じである。

時代を変えることで現代では成立しない物語を成立させているのだ。

しかし、それでは異世界そのままになってしまうので、
登場人物の思考や感情は現代人に似させてある。
その事で物語に没入させやすくしているのだ。
それがわかっていない。

さて、謝れば許されるのが本筋であるが、相手は鬼である。
謝ったぐらいで許されるはずもない。
謝っても済まない。戦って勝つしか生きる道がない。
そのことが明確に表されている。

この名言でこれまでの美少女系のぬるい作品群とは一味違う作品であることがわかるというものだ。

今にして思えば、物語の導入としては必要不可欠だったように思う。
鬼と戦って勝つ話を描くための申し分ない動機づけといえるだろう。

この名言で興味を持ち、観続けていると修行のシーンが登場する。

ジャンプ作品では久しくなかった修行。
「ワンピース」のような能力ではない。
強くなるための試練がちゃんと用意されている。

端的に言えば、

「昭和の漫画」

みたいなのだ。
しかし、この昭和の漫画みたいな展開が実は本作の魅力の一つだとも思っている。

そして、鬼殺隊の剣士への試験。
そこで現われる「全集中、水の呼吸。」
刀から葛飾北斎の「GREAT WAVE」のような水の波紋。
CGでもなく、手書きのありきたりな描写でもない。
これで、私のハートはわしづかみである。

それもそのはずである。
アニメ製作がufotableなのだから。

以前同じufotableが製作した「Fate」を観た事がある。
「Fate」は何作かあるので、どれだったか明確でないが、
正義とはなんぞやを長々とのたまう作品であった。

で、その作中で男の槍使い(ランサー)が登場する。
その槍のアクションシーンが圧巻であった。
実写でもこのような動きのできる役者はいないのではないか。
と思われるぐらいのシーンである。

そんなアクションシーンを描いたことのあるスタッフの作品なのだから、
剣術シーンが面白くないわけがない。

後日「エヴァンゲリオン」の新劇場版にも関わっていることが判明。
鬼の手がすぐに復活したり、伸びたりするシーンがエヴァに似ているのも頷ける。

こうして、すっかり虜になってしまった私はテレビシリーズを毎回楽しみに観ていたのであった。

しかしまぁ、こんな作品が出るべくして出た感がある。
銃撃アクションが全盛だった90年代。
シュワちゃん、スタローン、ブルース・ウィリス。。。
とガンアクション全盛期。
日本では「西部警察」「あぶない刑事」がその象徴的な作品だろう。

そんなガンアクションの集大成が「男たちの挽歌」であり、
その監督であるジョン・ウーは「ミッション:インポッシブル2」を手がけることになる。

当時の私はガンアクションに食傷気味だったので、香港アクションに傾倒していたが、
日本ではハリウッドの影響をモロに受けてガンアクションとド派手な爆発ばかりやっていた。

日本でアクションするなら銃でもカンフーでもなく、
刀だろうと思っていた。
にも関わらず、日本の時代劇は昔ながらのアクションから脱することが出来ず、
マンネリ状態に陥っていたように思う。

そんな中「るろうに剣心」の実写版が登場する。
そして本作の登場だ。
出るべくして出たといえるだろう、

今度はアニメである。
それは驚くべきことだ。

SFでも「スターウォーズ」に対抗した実写映画は不発に終り、
アニメである「機動戦士ガンダム」がヒットした。
ついに日本映画の本丸とも言えるチャンバラでも、
アニメに遅れをとることになってしまった。

日本映画の実写界はこれからどうなるのか、
気が気でない。

そして、昨今なにかといわれる日本の右傾化。
まぁ、フィクションの話なので、冗談として本気にはしないと思うけれど、
エヴァで話数を旧字体にするのに始まり、
本作では生殺与奪、武運長久といった昔ながらの言葉が多く登場する。
おそらく大正時代という雰囲気を出すためなのだろう。

他にも西洋的な物は鬼の衣装に使われ、西洋に対して非常に批判的である。
その象徴が鬼舞辻無惨の初登場時の衣装。
どうみてもマイケル・ジャクソンのPVの衣装にしか見えない。
そういったよく言えば古風、悪く言えば右寄りな作風が、
人気の出た理由のようにも思える。

長くなったついでに那田蜘蛛山編は劇場公開されていないが、
感想を書いておく。

改めて今回視聴した感想は、
BGMの素晴しさだ。

本作の音楽監督は「Fate」と同じ梶浦由記監督。
NHKの歴史番組ヒストリアと同じ人である。

ヒストリアでは時折歴史上の悲劇の人物を紹介する回がある。
その時のなんとも切ない雰囲気が本作の音楽にもある。

これは単にヒストリアでの感動的な回が私の脳内にあり、
それが条件反射的に本作でも反応しているだけかもしれない。

それを考慮に入れても本作は感動的な場面がいくつも存在する。
特に鬼に変わる前の人間に対する描写がなんとも切ない。

そのようなことから本作は、

泣けるアクション時代劇

と呼べなくもない。
そうそれはまるで、昭和の時代劇のそれであり、
お涙頂戴感満載の感動巨編でもあるのだ。

これがこの作品が世代を越えて愛される理由の一つだと思っている。